雛子の毎日

60代主婦の泣き笑いの毎日

気づかなかった

うちは電車の駅からは遠く

バスで4駅。

歩くと30分はかかる。

 


バスは私が嫁いだ時には1時間に4本、

ラッシュ時には6、7本あった。

年々本数が減り

廃線になった路線もあり

今では1時間に1本。

 


なので、私の実家が所有する

実家近くの駅まで2分の駐車場に

一台、使わせてもらっている。

 


電車に乗って出かける時は

実家近くの駐車場まで15分、

渋滞を考え20分前には家をでて

駐車場に停めて

電車に乗る。

 


その日、私は用事があって

実家の駐車場に停めて電車で出かけた。

帰り、電車を降りて駐車場まで歩いていた。

 


駅から考えごとをしながら歩いていた。

母に似た年恰好の老女が歩いていた。

小さい老女。

スタスタと追い抜かした。

 


駐車場へと道を曲がったとき

「雛子?」と声をかけられた。

 


小さい老女と少し離れて歩いていた父だった。

 


父と母は「世界一の朝食」が有名な

高級温泉旅館へ

朝食を食べにいくために一泊旅行の帰りだったようで

どうも同じ電車に乗っていたらしい。

 


父も私に似た人だけど、その割に年取ったな、

やっぱり人違いかな、と思いつつ声をかけたらしい。

ああ、やっぱり雛子か。

おばあさんみたいだぞ、と父。

 


いやいや、もう私も60歳だし初老だよ。

しかも今日か明日かというくらいらに初孫が生まれそうだよ。

正真正銘のおばあさんだよ。

 


それにしても、すれ違って追い越しておきながら

母と気づかなかった私。

 


父に声をかけられても

一瞬、ほんの一瞬だったが

誰かわからなかった。

 


これが年月というものか。

 


話が飛ぶが

野生動物って、子育てを終えて巣立ったら

顔を忘れてしまうらしい。

巣立ったあとに出会したら

敵同士戦うらしい。

 


結局私も単なる哺乳類動物にすぎない。

人間は母体の中でミジンコレベルから

魚類両生類を経て、哺乳動物として生まれてくる。

生まれてからは言葉も持たない原始人から

だんだんと知恵をつけて現代人になっていく。

小さい頃の万引きは叱っても仕方ないという。

あれはまだ進化過程の狩猟農耕民族で

そこにペンがあったからもって帰った、というレベルなのだと聞いたことがある。

 


そして頂点を過ぎ、

人生の終わりに向かう時は

赤ちゃんに帰るという。

知能動物の人間から野生動物あたりまで退化したということか。

 


今日も読んで頂き、ありがとうございました。